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2009年2月15日 (日)

問題多い海自派遣

「麻生のぶれ」の「小泉の反撃」、定額給付や消費税問題など話題にことかかない国会情勢ですが、海賊対策として「自衛隊のソマリヤ沖派遣」がそんなに大きな話題とならず、派遣が決まりましたが・・・

水島先生のブログの引用で、おさらいしておきます。

「ソマリア海賊の問題」です。28日、浜田靖一防衛大臣は、アフリカ東部のソマリア沖に出没する「海賊」対策のため、海上自衛隊に派遣準備指示を出しました。

各紙ともに特集記事を出して詳しく伝えています。安保理決議があり、各国が軍艦を出しているから当然という意見もありますが、昨年6月の安保理決議1816号は米仏両国がかなり強引に可決させたもので、実は議論のあるところです。この決議で、各国はソマリアの領海にまで軍艦を入れられることになりました。91年の内戦でソマリア中央政府が崩壊。沿岸警備隊もなくなると、EU諸国や日本など先進国の漁船がソマリアの海で魚をとり、また産業廃棄物を捨てました。ソマリア漁民や元沿岸警備隊員たちが「海賊」となって、この間の資源被害を海賊行為で賠償させているという面もないとはいえません。「海賊ビジネス」といわれる側面です。

海賊は犯罪で何ら正当化できませんが、だからといって自衛艦を派遣して問題が解決するわけでもありません。しかし、海軍力を強化している中国がいち早く軍艦を送ったことから、『朝日』25日付によると、内閣官房のある高官が「中国に負けるわけにはいきません」と進言。首相が「そりゃそうだ」と応えて、自衛艦派遣を急げという流れになったようです。防衛省は慎重で、「海賊対策新法」を制定してからというのを、麻生首相が急がせた結果、自衛隊法82条の海上警備行動による派遣になったものです。この規定は日本近海を想定したもので、しかも海上保安庁では対処できない「特別の必要」性が示されねばなりません。海自か海保かという選択肢で考えてよい問題ではないのです。第一義的に海上保安庁の問題として緻密に検討されるべきでした。

実際、海保には、東南アジア各国の海上保安・沿岸警備機関とのネットワークもあり、中東にもサウジやアラブ首長国連邦などに人員を派遣しています。ソマリア海賊問題でも、周辺諸国への人的・資金的援助も実際に展開している矢先、なぜ自衛艦を送るのか。今回は中国の影が大きいと『東京新聞』29日付は指摘していますが。

各紙社説の評価も微妙に割れました。『産経』29日付社説が海賊新法までの「つなぎの措置」として柔軟に運用せよ、『日経』29日付社説は「むしろ遅すぎた」というトーン、そして『朝日』24日付までもが「新法での派遣が筋だが」、例外的に海警行動でやむを得ないという論調でした。他方、『毎日』28日付は、派遣を批判するトーンが強いものでした。地方紙・ブロック紙では、海賊対策の根拠法を急げという主張が『熊本日日』27日付、『南日本新聞』29日付などに出ましたが、むしろ「危うさ残す見切り派遣だ」(『西日本新聞』26日付)、「憲法を軽んじていないか」(『琉球新報』27日付)、「ソマリア派遣『積み残しが多すぎる』」(『北海道新聞』27日付、同旨『岩手日報』29日付)等々、批判的な姿勢が目立ちました。

特に『新潟日報』29日付の「泥縄の海自派遣はやめよ」は最も厳しい論調でした。海警行動による派遣は「論理も筋もない場当たり的な派遣で、到底容認できない」として、「海上交通の安全を確保するのは海上保安庁の任務である。…海賊対策を急ぐなら、なぜ海保の活用を考えないのか。…海自より哨戒や洋上監視の能力が劣るとは思えない。海自を派遣するとしても、自衛官には逮捕や尋問の権限がないため、海上保安官を同乗させるという。木に竹を接いだような部隊が機能するのか。…憲法軽視も極まれりである」。まったく同感です。

海賊行為は犯罪で、これを取り締るのは海上警察の仕事です。犯罪の抑止、鎮圧、逮捕、捜査、人質救出のプロではなく、各国ともに軍艦を送ってきたところに別の問題もあります。軍艦で船舶をエスコートするやり方にも限界があり、仏海軍中将によれば、各国の軍艦でカバーできるのはソマリア沖の2%にすぎません。「海賊がロケット砲で武装しているから自衛艦」というのも安易な理由づけです。武器使用基準の曖昧さは最たるもので、海警行動の場合、警察官職務執行法7条で正当防衛が基本です。それに海自の場合、逮捕権限がない。武装工作船に対する軍事行動の訓練はしていても、海賊逮捕や人質救出などの訓練は十分でないという点からも、素人の自衛隊の派遣はむしろ危険という指摘があります。海自の特別警備隊を乗せていくようですが、この部隊も「不審船」対策専門で、逮捕や証拠保全の権限もノウハウも持っていません。なお、この部隊は、「はなむけ」という特殊な訓練で隊員が死亡する事件を起こしました。

『新潟日報』がいうように、海保の装備や能力は近年かなり強化されています。大型巡視船13隻を保有(「しきしま」は外洋型)。特殊警備隊(第5管区)もあります。首相の一言「そりゃそうだ」で急いで派遣され、その間に首相が交代では、送られる自衛艦艇にとっては突然の「派遣切り」のようなものです。

「広大な海域で有効な海賊対策を行うには国際協力が不可欠だ。その役割分担として日本は何をすべきか。こうした議論を脇に置いての海自派遣は拙速の見本といえよう」。前述の『新潟日報』社説の結びの言葉です。この問題は冷静に、かつ日本が持っている能力を緻密に検討した上で判断すべきでしょう。その際、基本に憲法の視点を忘れてはならないでしょう。


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